コンセプト
ブルー ボックス
ブルー・ボックスは可動性の彫刻であり、舞台であり、集いの場である。
投影スクリーンとしても、情報の集まる場所としても、また、動くためのステージとしても利用できる。完璧な空のスペースである。世界中で場所を生み出し、アイデアを受け入れ、コミュニティーを作り出す人類にとって特有のロケーション。それがブルー・ボックス。アート&ネイチャー、アート&サイエンス、そして対話と議論を生み出す場である。
ブルー・ボックスは中も外も使用可能。透明にもできるし、閉じることもできる。形は原始的で、時間に捉われない。また革新的な技術を使い、時代に先駆けている。構造は考え抜かれており、あらゆる側面において多機能性を発揮する。ブルーボッスクス空間の中では「情報」と同時に「動き」も扱われ、それゆえ、思想的には、「生きた細胞」といった認識となる。
使用しているのは最新の技術と素材。デジタル時代において革新的な要求に見合うのは必然である。形はスペースを生み出すのであって、内容を押し付けるものではない。この造形は審美的な効果を強く持ち、近景、遠景ともに、人を自然と惹きつけ、注視させる力を兼ね備えている。独創的でいて、なおかつ単純な構造が、同時に最大の複雑さを外部へと表現しているからである。
このプロジェクトは、2~3年の割合で世界各地に設置展開されていく。最初の発表の場は、2021年春にベルリンで予定さている。

無の空間
人が空虚を恐れるのは一般的である。しかしながら、空であることは何も無いことではなく、想像することの前提条件なのである。我々は、何かが『無いこと』として空虚を感じることができる。空のスペースは、満たされることを求める期待そのものといえる。空であることは、事の始まりの「その前」という瞬間として、創作を満たすための必要条件である。存在しているものを解き放って初めて自由な空間が生まれ、その中では新しい意義、新しいイメージが動きの中で生み出されていくことが可能となる。
空のスペースはそれゆえ決して完全な「無」ではない。そうでなければ、あらゆる粒子のエネルギーや寿命がまさにゼロということになってしまう。むしろ空の空間は湧き出る泉のようでいて、その中で「仮想の反物質と物質の粒子のペア」が常に生じては無くなり、一方で物質の超過が起きているのだ。森羅万象である。
情報が集められ、動きの中で素材化されていく空のスペース、それがブルー・ボックス。「情報」と「動き」。これが創造における二つの主要な力である。


細胞
ほぼ600万年前、細胞が形を得た。初めて、細胞のいくつかが単体でいる事をやめ、他の細胞と一緒になった。大胆なステップで、それ以来、良かれ悪かれ依存し合っている。例えば今日では、100兆個もの細胞が働き合って人間を構成している。細胞から遺伝情報を抜き取ったり与えたりすることで、生物は新しい性質を得る事ができる。
1855年、病理学者ルドルフ・フィルヒョウが『Omnis cellula e cellula (オムニス・ケッルラ・エー・ケッルラ)』という信条を発表した。すべての細胞は細胞から生じる、という意味である。遺伝はオンとオフを繰り返している。細胞には寿命がある。細胞の構造を理解したい者は、細胞の寿命の歴史について読まなければならない。いずれ人工細胞を刺激し分割させることが可能となれば、生物学者はようやく落ち着いて腰を下ろすことができるだろう。


意識、
情報
& 動き
ブルー・ボックスは、その均一性ゆえに中からは解き放たれ、外からは集結する空のスペースとなっている。また、「情報」や「動き」の意識的な相互関係の空間でもある。時が始まった時点から、全ての素材を自由に決められる空間になっている。「意識」は元々、全ての生の始まりにあるのである。
我々は全ての「情報」が常に存在すること、そして「動き」がどんな時もすべての方向に向かうということを確信している。「情報」と「動き」は相互に作用しあうもので、その結果導き出される素材そのものでもある。その原始的な形における創造、そして、そのような時間を超えた2次元の情報フィールドは、同時に3次元の空間まで超越している。
意識的な生物は、時が「動き」の一部であるということを分かっており、後に、その空間の中でも内在するものが生まれ、形を決めることができる。そしてそれは形が何であったか、何であるか、そして何になるのかを分かっている。時が、あたかもすべての時間が、今も存在しているかのような意識の結果として解きほぐされるかの様に。

「動き」を通して情報の一部を得られ、それがまた新しい「動き」を可能にしている。一度始まると、これは終わりのないプロセスにとって不可欠なものとなる。「意識」はこの空間の中で大きくなっていき、その中心に集結していく。この「意識」の中で意志が自由になるのだ。
そうすると我々が、どの「情報」とどの「動き」を結びつけるかが課題となる。この相互関係の結果は常に予想ができるものである。どんな時も意識的に創造物である人間は、ブルー・ボックスの空の空間の中で、自分を形成することができるのだ。
ブルー・ボックスは、存在している「情報」に接するために回転する。そして、それによって引き起こされる視点の変化こそが必要不可欠である。人は視点を変化させることによってのみ、物事の真の性質を認識することができる。この「動き」から最終的にすべての他の物が形作られていく。「情報」が広大な「動き」に基礎を置けば置くほど、結果はより普遍の物となるのだ。ブルー・ボックスはそれゆえ、科学と芸術が最も密接に連帯したものとなっている。
水
水素と酸素の組み合わせから作られている水が、創造的な形、全ての生物を作り出している。そこでは、「情報」が蓄積され、また、常に全ての方向に向かって動いている。
水の上に浮かぶブルー・ボックスは、まるで母船のように世界中の科学と芸術の大学を結んでいる。
最初の設置場所を初めて変更した後、ブルー・ボックスに20x20x20mのキューブがさらに2つドッキングされ、ウォーター・モレキュール H20という形で表現方法を拡大する。そこは、ブルーボックスで働くスタッフやゲストの居住スペースとなる一方、アーティストや科学者たちのスタジオや研究施設となる。
